登山を楽しんだあとの帰宅時間、階段を降りるときに「うっ…!」と足に走る鈍い痛み。翌朝起きると太ももやふくらはぎがガチガチで、洗面所にたどり着くまでが一苦労…。そんな経験はありませんか?
実は下山後の筋肉痛は、登りよりも「下り」に原因があることが多いのです。下山時はブレーキをかけながら重力に逆らって足を動かすため、筋肉の中でも特に大腿四頭筋(太もも前側)が大きな負担を受けます。

この“エキセントリック収縮”という動きは筋肉に細かな損傷を与え、翌日以降の痛みにつながります。
しかし、ちょっとした予防策と下山後のケアを取り入れるだけで、筋肉痛をかなり軽減できます。ここでは、登山歴10年以上の筆者が実際に効果を実感した予防&回復法10選を詳しく解説します。
下山後の筋肉痛の原因を知ろう
登山の下山後に起こる筋肉痛は、単なる疲れだけが原因ではありません。最大の理由は、下りの動作が筋肉に強い「ブレーキ負荷(エキセントリック収縮)」をかけるためです。

これは、坂道で転がるボールを止めるように、筋肉が伸びながら力を発揮する状態で、太ももやふくらはぎの筋繊維に微細な損傷を与えます。
さらに、この損傷を修復する過程で炎症反応が起き、痛みや張りが現れます。
また、長時間の下山では衝撃によって血流が一時的に滞り、老廃物や代謝副産物(乳酸など)が蓄積しやすくなることも痛みの要因です。特に体力が落ちていたり、準備不足だった場合は筋肉の回復力が追いつかず、痛みが数日続くこともあります。
原因を理解しておくことで、「なぜ痛くなるのか」が分かり、予防や回復のための対策もより効果的に取り入れられるようになります。
筋肉痛を予防するための登山前準備

下山後の筋肉痛を防ぐためには、登山当日だけでなく「登る前の準備」が重要です。特に、日常から筋力トレーニングや柔軟性アップを習慣化しておくことで、下山時の衝撃に耐えられる強い脚を作れます。
おすすめはスクワットやランジなどの下半身トレーニングです。スクワットは太もも・お尻・体幹を一度に鍛えられ、下りでのブレーキ動作をサポートします。ふくらはぎを強化するカーフレイズは、長時間の下山で疲れやすい足首周りを守ってくれます。

また、登山前日や当日の朝には、太ももの裏(ハムストリングス)や股関節まわりのストレッチを行い、筋肉の柔軟性を高めましょう。
さらに、靴やザックの事前調整も見落とせません。登山靴は足に合っていないと歩き方が不自然になり、特定の筋肉に負担が集中します。ザックは背中にフィットさせ、重量バランスを整えることで、下半身への余計な負担を減らせます。
こうした準備を重ねることで、筋肉痛のリスクはぐっと下がり、下山後も快適な状態を保てるようになります。
下山後の筋肉痛を防ぐ&和らげる方法10選
下山後の筋肉痛は、登山中の負担を分散し、下山後にしっかりケアすることで大幅に軽減できます。以下の10項目を意識して取り入れましょう。
- トレッキングポールを使う:下山時の衝撃を腕に分散し、脚の負担を軽減。
- 小股で下る:歩幅を小さくし、太ももへのブレーキ負荷を減らす。
- 休憩をこまめに取る:30〜40分ごとに休憩し、筋肉の硬直を防ぐ。
- 登山靴のフィット感を調整する:足のズレや無駄な力みを防ぎ、疲労を軽減。
- 下山前にストレッチを挟む:太ももやふくらはぎを軽く伸ばし、筋肉の柔軟性を確保。
- 帰宅後すぐの軽いストレッチ:筋肉をほぐして血流を促進。
- 温熱ケアで回復促進:入浴や温熱パッドで下半身を温め、疲労物質を流す。
- フォームローラーで筋膜リリース:筋肉の張りを緩め、回復を早める。
- タンパク質と炭水化物の補給:筋肉の修復とエネルギー回復をサポート。
- 十分な睡眠を取る:成長ホルモンの分泌を促し、体の修復を加速。
この10項目を実践すれば、翌日の「階段地獄」も大幅に回避でき、次の登山もより快適に楽しめます。
筋肉痛を防ぐ方法(登山中)
1. トレッキングポールを使う
下山時の膝や太ももへの衝撃を吸収するために、トレッキングポールはほぼ必須アイテムといっても過言ではありません。腕の力で体重の一部を支えることで、脚の筋肉への負担が減り、長時間歩行後の疲労も和らぎます。
ポイント:ポールの長さは、下山時は少し長めに調整すると安定感が増します。
2. 小股で下る
歩幅を大きくして下ると、着地時に太もも前面に大きなブレーキ負荷がかかります。逆に小股でテンポよく下れば、負担は分散され、筋肉痛も軽減できます。特に傾斜の急な場所や不安定な足場では小股歩きが安全面でも有効です。
3. 休憩をこまめに取る
「一気に下りきって早く温泉!」と思う気持ちはわかりますが、疲労が蓄積すると筋肉の動きが硬くなり、怪我や筋肉痛の原因に。30〜40分ごとに1〜2分でも良いので小休憩を取り、水分や軽い行動食でエネルギー補給を行いましょう。
4. 登山靴のフィット感を調整する
靴が緩いと下りで足が前にずれて爪や足首を痛めるだけでなく、太ももやふくらはぎに余計な緊張が走ります。下山前に靴紐をしっかり締め直し、足首の安定感を高めることが大切です。
5. 下山前にストレッチを挟む
山頂や昼食休憩時に、太もも前側やふくらはぎを軽く伸ばしておくことで、筋肉の柔軟性が保たれ、下山時の負担が軽減されます。特に大腿四頭筋ストレッチはおすすめです。
筋肉痛を和らげる方法(下山後)
6. 帰宅後すぐの軽いストレッチ
下山後にそのまま座りっぱなしや車移動になると、筋肉が硬直しやすくなります。自宅や温泉で軽くストレッチを行い、血流を促進しましょう。ハードなストレッチは逆効果なので“軽くほぐす”感覚で。
7. 温熱ケアで回復促進
お風呂や温泉でしっかり温めることで血流が改善し、乳酸などの疲労物質の排出が促されます。特に下半身をじっくり温める半身浴や、就寝前の温熱パッドは効果的です。
8. フォームローラーで筋膜リリース
フォームローラーを使って太ももやふくらはぎの筋膜をほぐすと、筋肉の張りが緩み回復が早まります。痛気持ちいい程度の圧で、呼吸を止めずにゆっくり行いましょう。
9. タンパク質と炭水化物の補給
筋肉の修復にはタンパク質が必要ですが、エネルギー源となる炭水化物も欠かせません。下山後は「おにぎり+プロテインドリンク」など、簡単に摂れる組み合わせが便利です。
10. 十分な睡眠を取る
睡眠中に分泌される成長ホルモンは筋肉の修復を助けます。就寝環境を整え、できれば7時間以上の睡眠を確保しましょう。寝具や枕を調整するのも回復スピードに影響します。
登山者におすすめの回復サポートアイテム
- ブラックダイヤモンド トレッキングポール
軽量かつ耐久性が高く、長時間下山でも腕や肩への負担も少ない。
- THERMOS 保温ボトル
下山後すぐに温かい飲み物を飲むことで血流促進&冷え対策に。
- TriggerPoint GRID フォームローラー
自宅での筋膜リリースに最適。コンパクトなので収納場所も取らない。
まとめ
下山後の筋肉痛は「避けられないもの」ではなく、「正しい歩き方」と「事後ケア」で大きく減らすことができます。登山中は小股で下る・ポールを使うなど負担を分散し、下山後はストレッチ・温熱ケア・栄養補給で早期回復を目指しましょう。
筋肉痛を軽減できれば、翌日も元気に過ごせて次の山行も前向きに計画できます。今日から実践して、山をもっと楽しむ体づくりを始めてみてください。
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