「朝、鯖をしめて、一昼夜かけて京都に届ける。」
そんな無茶なことをやっていた人たちが、かつて本当にいた。しかも一夜のうちに山を越えて。
それが“鯖街道”。
聞いたときは正直、「ロマンだなぁ」と思っただけでした。けどその言葉が、なぜかずっと頭から離れなくて。気づけば地図を見て、天気を調べて、ザックを背負って、電車に飛び乗っていました。
今回はその鯖街道の中でも最も険しいといわれる「針畑越えルート」を、福井県の小浜から京都まで、野宿しながらほぼ1泊3日で歩いてきたのでブログに残します。
ルート全長は約72km。舗装路が約50km、山道が約20kmほど。ゴールは京都・出町柳。目指すは「鯖街道口」と刻まれた石碑です。
▶︎ 鯖街道とは(https://sabakaido.jp/about/)
鯖街道とは?

まず「鯖街道」って何ぞや?という方のためにざっくり説明を。
これは、若狭湾で獲れた魚を京都まで運ぶための物流ルートの総称で、特に「鯖(さば)」が多かったことからこの名が付きました。
冷蔵技術なんてない時代、朝に小浜で獲れた鯖を塩で締めて、一昼夜かけて京都へ。その頃にはちょうど「いい塩梅の塩鯖」になっていたそうです。
その食材が京都の料亭や町人の食卓を支え、結果的に若狭の魚が京都の食文化を作った——とも言われています。歴史って、物流なんだな……としみじみ。
ということで、僕もその「鯖を運んだ道」を、塩鯖……じゃなくてサバ缶を片手に歩いていきます。
鯖街道は4ルート、今回は「針畑越えルート」で

鯖街道には主に以下の4ルートがあります。
- ① 若狭街道
- ② 西近江路
- ③ 周山街道
- ④ 針畑越えルート ←今回これ!
今回選んだ「針畑越えルート」は、最も古くて険しいとされる道。距離は約72kmで、山越え成分がしっかりあるトレイル感強めなルートです。
他ルートは舗装路が多いのですが、こちらはトレイル・峠・集落・林道のバリエーションが豊富。登山も街歩きも楽しみたい人にはぴったり。
鯖街道の行程とスタート時間:遅めの昼出発から

- 名古屋駅8:00発 → 小浜駅12:24着
- そこから即出発。
- 全行程72km、2泊3日で歩き切る計画(実際は1泊3日)。
ちなみに、今回の旅は完全野宿スタイルです。泊まる場所に不安ありありなんですけど、そこも含めて旅の醍醐味。事前に見つけた「ジャパンエコトラック(モンベル系)」のアプリを使ってルート確認。
針畑越えルートも載っているので、基本それを頼りにし、さらに鯖ミュージアムで貰った簡易的なマップも確認しながら進んでいきます。
主な通過ポイント

ざっくりルートは以下のようになります:
- 小浜(出発)
- 遠敷(おにゅう)…「お水送り」で有名な若狭神宮寺エリア
- 上根来(かみねごり)…遠敷谷最奥の山村集落
- 針畑峠(根来坂峠)…高島トレイルと重なる部分。この辺りで一泊。
- 小入谷〜朽木〜久多…集落と里山の間を縫う道
- オグロ坂峠〜八丁平〜花脊…徐々に京都が近づく雰囲気
- 鞍馬〜貴船…観光地エリア
- 出町柳(京都)…ゴール!出町橋に「鯖街道口」の石碑あり
山と舗装路の割合

針畑越えルート全体の距離は約72km。体感ですが…
- 舗装路:約50km
- 山道:約20km
ぐらいの割合です。ロードがとにかく長く、坂道も多いのでしっかりと準備しましょう。山道の多くは林道っぽい幅が広くて歩きやすいですが、一部トラバースだったり滑りやすい部分もあります。
野宿について

どこで寝るか問題。
調べた限りだと、キャンプ場的な場所はあまり無く(あっても営業期間外)、野宿適地もバラバラ。高島トレイルの一部を通る区間もあるので、そこのルールに則ってテント泊をする予定です。
高島トレイルのマナー
キャンプ場へ行けないときは、林道脇の駐車スペースなどを使用可能。ただし水場は遠く、焚き火NG、痕跡残さず!
時間帯によっては、公園などで寝る可能性もあるかもと思っていましたが、今回はなし。もちろん公園の場合タープは張らず、火器使用もなし。
鯖街道は歴史・文化の香りも

ちなみに鯖街道のルート上にある若狭・小浜は、奈良の東大寺と深い関係があります。
毎年3月12日に行われる「お水取り(修二会)」の儀式で使われる「お香水(おこうずい)」は、小浜の若狭神宮寺から送られてくる水。
地下水脈を通って10日かけて奈良の「閼伽井(あかい)」に届くという言い伝えがあり、3月2日には小浜で「お水送り」という儀式が行われます。
サバだけじゃなく、水まで届けてる。小浜の物流エリートぶりに脱帽です。
ゴールは出町柳「鯖街道口」の石碑――京都の街が見えた瞬間、込み上げる達成感

針畑越えルートを歩き切った先に待つのは、京都・出町柳の出町橋のたもとにある「鯖街道口」の石碑。これが、長い旅の終着点です。
福井県小浜を出発してから、山を越え、川沿いを下り、幾度ものアップダウンを経てたどり着く京都市街。その変化に富んだ道のりが、ゴールの感動をよりいっそう引き立ててくれます。
出町柳の街中に入り、加茂川と高野川が合流する出町橋が見えてくると、「本当に歩いてきたんだ…」という実感がぐっと湧いてきます。石碑は結構大きめサイズで、タッチした瞬間に涙が出そうになりました。
周囲にはベンチや鴨川デルタがあり、ゴールの余韻に浸りながらのんびり過ごすのもおすすめ。温泉がない分、ここで靴を脱ぎ、足を川に浸して一息つく瞬間がたまらない癒しになります。
鯖街道を歩こうと思っている方へ

この針畑ルート、個人的にはトレイル×歴史×集落が混ざり合ったかなり濃いルートでした。舗装路多めとはいえ、山の中もきっちりあるので飽きません。
ただし野宿勢はしっかり水場と寝床の見込みを立てましょう。林道脇や集落外れにチャンスありです。自信がない方は宿を予約することをおすすめします。
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また「お水送り」「若狭神宮寺」など、歴史的・文化的なポイントも点在しているので、歩いていて面白いです。そして終盤に鞍馬・貴船・出町柳という観光地フィニッシュという流れが、ご褒美感たっぷり。
まとめ:鯖街道を歩いた感想

実際に歩いてみて感じた鯖街道は、想像以上に舗装路が多く、体感では7割近くがアスファルト。山道もありますが、足裏への負担が大きい長いロード区間が続くため、靴選びと歩き方に工夫が必要でした。野宿メインで挑むにはやや難易度高めですが、野生動物などに気を付ければ静かな場所でひっそり泊まることも可能です。
そんな道中、歴史ある若狭神宮寺や鵜の瀬、針畑峠の静けさには心が洗われるようでした。そして、ゴールの「鯖街道口」の石碑にたどり着いたときには、旅の重みと静かな達成感が胸に残ります。
最後まで歩ききったご褒美に、美味しい鯖を味わえば、もう達成感はすごいです。ただのサバ缶でも、歩いた後に食べると沁みる味。旅の終わりに、ぜひ味わってみてください。