登山漫画の中でも圧倒的な評価と人気を誇る作品が、石塚真一先生による『岳(ガク)』です。

北アルプスを舞台に、山岳救助という過酷な現場をリアルに描きながら、「なぜ人は山に登るのか」「なぜ命をかけて救うのか」という本質的なテーマに迫る名作として、多くの登山ファン・漫画ファンから支持されています。
単なる登山エンタメではなく、山の美しさと同時に、厳しさ・恐ろしさ・人間の弱さと強さまで描き切る作品。それが『岳』です。
漫画『岳(ガク)』の基本情報
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| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | 岳(ガク) |
| 作者 | 石塚 真一 |
| ジャンル | 山岳・ヒューマンドラマ |
| 掲載誌 | ビッグコミックスピリッツ |
| 出版社 | 小学館 |
| 巻数 | 全18巻 |
| 連載期間 | 2003年〜2012年 |
| 主なテーマ | 山岳救助、登山、自然との向き合い方 |
| メディア展開 | 実写映画化あり |
登山漫画としては異例とも言える数々の賞を受賞しており、作品のクオリティの高さは折り紙付きです。
『岳』のあらすじ|山岳救助を通して描かれる「生と死」
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物語の主人公は、島崎三歩(しまざき さんぽ)。
世界の名峰を登り尽くし、アメリカで山岳救助を経験した後、日本の北アルプスで山岳救助ボランティアとして活動しているクライマーです。
そこに、新人女性隊員・椎名久美が長野県警山岳遭難救助隊として配属され、物語は本格的に動き始めます。
雪山での遭難、滑落、低体温症、吹雪、ヘリ救助の限界――
現実の登山事故をモデルにしたエピソードを通して、「助かる命」「助からない命」の両方が容赦なく描かれます。
単なるヒーロー物ではなく、
✔ 救えなかった命への後悔
✔ 救助する側の精神的負担
✔ 山に挑む人間の覚悟
といった、重くてリアルなテーマが物語の中心です。
名作登山漫画『岳(ガク)』の全巻あらすじ・魅力を紹介
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以下では、登山漫画『岳(ガク)』の各巻について、簡単なあらすじとともに、それぞれの巻ならではの見どころ・魅力をわかりやすく紹介していきます。
これから読み始める方にも、すでに読破した方にも、シリーズを振り返るガイドとして役立つ内容になっています。
岳(1) (ビッグコミックス)
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北穂高岳で起きた遭難事故をきっかけに、山岳救助の過酷な現場がリアルに描かれる第1巻です。転落して動けなくなった黒岩を救うため、山岳救助ボランティアの三歩が現場へ向かいます。
一見頼りなさそうな三歩ですが、その行動と判断力から、命と向き合う山の現実が伝わってきます。山岳救助の緊張感と、人と人とのつながりが強く印象に残る導入巻です。
岳(2) (ビッグコミックス)
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アイスクライミングの名所・滝谷で起きた氷壁事故を通して、冬山の過酷さと判断の重さが描かれる第2巻です。氷塊の直撃で重傷を負ったクライマーを前に、三歩とザックは極限状況での救助に挑みます。
事故を起こしてしまったパートナーの葛藤や後悔も丁寧に描かれ、技術だけではどうにもならない山の現実が突きつけられます。命を預かる現場の緊張感と、人間の弱さが強く印象に残る一冊です。
岳(3) (ビッグコミックス)
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百名山完登を目前にした登山者夫婦との出会いを通して、「山を制覇する」という考え方そのものが問い直される第3巻です。槍ヶ岳を百山目に選んだ二人の姿に、三歩はかつてのエベレスト挑戦の日々を重ね合わせます。
登頂という結果だけを追い求めることの危うさと、それでも山に向かってしまう人間の心理が静かに描かれます。山とどう向き合うべきかを読者に考えさせる、シリーズの中でも思想性の強い一冊です。
岳(4) (ビッグコミックス)
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大キレットで発生した男子学生の滑落事故を皮切りに、ほぼ同時刻に別地点でも遭難が発生する、緊迫感に満ちた第4巻です。ヘリが使えない悪条件の中、三歩は一人でふたつの現場を背負う決断を迫られます。
限られた時間と体力の中で、誰を、どの順で助けるのかという極限の選択が描かれます。救助という行為の重さと、山での判断ミスが命に直結する現実を突きつける、シリーズ屈指の緊張感ある一冊です。
岳(5) (ビッグコミックス)
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穂高岳での救助で、要救助者は発見されたものの、救出の最中に三歩の背中で命を落としてしまうという、重い出来事から始まる第5巻です。助けられなかった命と向き合う、救助者としての現実が静かに描かれます。
山を下りた後の日常の中でも、三歩の心は事故から離れられません。久美との街での時間や何気ない選択を通して、救助者が背負う喪失感と、山と生きる覚悟がにじみ出る、感情面に深く踏み込んだ一冊です。
岳(6) (ビッグコミックス)
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富士山を舞台に、「谷村山荘」のおばちゃんが主役級として活躍するエピソードが描かれる第6巻です。三歩とは別行動となり、五合目から登り始めたおばちゃんは、途中で出会った女性と行動を共にすることになります。
軽い登山のつもりが、次第に体力と判断力を試される状況へと変わっていきます。山に慣れていない人の視点から、富士山という身近な山に潜むリスクと、人と人の支え合いが丁寧に描かれる一冊です。
岳(7) (ビッグコミックス)
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悪天候のなか、発見から3日後にようやく回収された遭難者の遺体。その間、三歩はテントも持たず、極寒の山中でひとり遺体に寄り添い続けていました。山の現実と、救助という行為の重さが強く突きつけられる巻です。
遺族からの厳しい言葉を受け止めながらも、三歩の行動を明かさずに謝罪する野田の判断、そして風邪をひいた三歩を見舞う久美とのやり取りが描かれます。命と向き合う救助の現場と、人としての優しさが胸に残る一冊です。
岳(8) (ビッグコミックス)
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北アルプスで行方不明になった母を、2年もの間待ち続ける娘・水ノ口苗。今もなお三歩はひとりで捜索を続け、帰りを信じる家族の想いと向き合いながら、山に入り続けています。
母が持っていったお守り代わりの一本の箸。その片割れを託される三歩は、「必ず見つける」という言葉の重みを背負い、静かな決意とともに捜索へ向かいます。生と死、希望と現実の狭間を描く、シリーズ屈指の切ない巻です。
岳(9) (ビッグコミックス)
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三歩が運んだ遭難者の遺体。その息子・朝倉陽平は、父が最期に残した「陽平、ピッケル」という言葉の意味を確かめるため、三歩を頼って山へ向かいます。父が何を託そうとしたのか、その答えを求めて現場へ向かう旅が始まります。
遺体発見現場で明らかになる、父が残した本当の想い。山で生き、山で死んだ者が、家族へ伝えたかったものとは何だったのか。喪失と継承をテーマに、静かに胸を打つ人間ドラマが描かれる一巻です。
岳(10) (ビッグコミックス)
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谷村山荘に届いた、小さな贈り物。その中に入っていたのは、「長生き」と刻まれた一枚の皿でした。子ども・ナオタが図工の授業で作った、谷村のおばちゃんへの想いが詰まった作品です。
さらに三歩宛ての包みを手にしたおばちゃんは、山にいる三歩のもとへ自ら届けに向かいます。人と人をつなぐ“贈り物”が、山という過酷な場所の中で、温かな物語として静かに広がっていく一巻です。
岳(11) (ビッグコミックス)
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会社倒産で職を失った伊達は、再就職先としてビルの窓清掃の仕事に就くことになります。高所恐怖症を隠したまま働き始めたものの、現場で三歩と出会い、恐怖と向き合いながら必死に仕事に取り組みます。
そんな最中、突然の停電により、伊達は高層ビルのゴンドラに宙吊りのまま閉じ込められてしまいます。山ではなく街の高所で起きる極限状況の中、人が一歩踏み出す勇気と再生を描いた、異色ながら印象深い一巻です。
岳(12) (ビッグコミックス)
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山小屋「梶ヶ山荘」の主人・梶さんが入院し、山に生きてきた男の“引き際”が静かに描かれる。長年山を守ってきた人の決断が、三歩たちの胸に重く響く。
居酒屋「ケルン」での忘年会とクリスマス会では、仲間たちの温かい時間が流れ、山とは違う日常の表情が見えてくる。遅れて現れる三歩と、再会を待つナオタのやり取りも心に残る一巻。
岳(13) (ビッグコミックス)
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不況で職を失った夫と、それを支える妻。ふたりの強い絆の原点となった、大学山岳部時代の出来事が明かされる。人生と山が重なる、静かで重みのあるエピソードが心に残る。
東京から来た女性の遭難をきっかけに、久美との出会いと交流が描かれる一方、三歩とザックのアメリカ遠征「ロングズピーク」での過酷な登攀も収録。不運が重なる中で迎える結末は、緊張感あふれる展開となっている。
岳(14) (ビッグコミックス)
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父を山で亡くしたナオタは中学生となり、三歩とともに初めての本格的な登山に挑む。父の記憶と向き合いながら歩くナオタに、三歩がかける言葉が静かに胸に響く一編。
沢登り中に発見された1本のペットボトル。中に入っていたのは「助けてください」と書かれた遭難者からのメモだった。わずかな手がかりから始まる捜索が、緊迫感あふれる展開へとつながっていく。
岳(15) (ビッグコミックス)
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子どもが生まれ、父親としても救助隊員としても気合いが入る阿久津。三歩をトレーナーに自主トレに励み、現場での成長を誓う姿が描かれる。
救助要請を受け、三歩が先行して現場へ向かうなか、後を追った阿久津を待ち受けていたのは、予期せぬ巨大な落石事故。隊員として、そして父としての覚悟が試される緊迫の展開が続く。
岳(16) (ビッグコミックス)
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巨大な落石事故で阿久津が重体となり、救助の現場はこれまで以上に重い現実を突きつけられる。責任を取って異動する野田、仲間の命と向き合う三歩の心にも大きな変化が生まれる。
親友の事故をきっかけに、三歩は救助者としての日々を見つめ直し、一人のクライマーとして自分の限界に挑む決意を固める。ヒマラヤ・ローツェ単独登攀へ向かう決断が、物語を大きく動かす転換点となる。
岳(17) (ビッグコミックス)
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北アルプスを離れた三歩は、ヒマラヤへと舞台を移し、かつての仲間オスカー率いるエベレスト登山隊と再会する。かつて救助した小田も加わり、それぞれの想いを胸に、過酷なヒマラヤ街道を進んでいく。
ローツェ単独登攀を目指す三歩は、街道の分岐でエベレスト隊と別れ、自らの挑戦へと歩み出す。一方、オスカー隊は世界最高峰へ向けて動き出し、運命を分ける決断が緊張感あふれる展開を生む。
岳(18) (ビッグコミックス)
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エベレスト最終アタックに挑むオスカー隊は、酸素切れと天候悪化という極限状況のなか、ついに山頂へ到達する。しかし下山開始と同時に、渋滞とブリザードが重なり、隊は生死を分ける地獄の状況へと追い込まれていく。
絶望的な状況の中で倒れていく隊員たち。万事休すと思われたその瞬間、ローツェへ向かったはずの三歩が姿を現す。命を賭した救助が始まる、シリーズ最大級のクライマックスが描かれる最終巻。
登山漫画『岳』が圧倒的に面白い理由
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1. 山の描写がリアルすぎる
『岳』は、登山経験者が読めばすぐに分かるほど、山の描写がリアルです。
- 天候急変の怖さ
- 稜線での強風
- 雪山の視界ゼロの恐怖
- 高山病・低体温症の描写
これらが、決して大げさではなく、淡々と、しかし緊張感たっぷりに描かれます。
「山を知っている人ほど刺さる漫画」と言われる理由です。
2. 山岳救助の現実を真正面から描いている
『岳』の最大の特徴は、「登る側」だけでなく、「救う側」を主役にしている点です。
山岳救助は、常に危険と隣り合わせ。
助けに行く側も、命をかけて現場に入ります。
- ヘリが飛べない天候
- 人力での捜索
- 時間との戦い
- 二次遭難のリスク
登山漫画でありながら、「仕事としての山」「責任としての山」が描かれている点が、他作品との大きな違いです。
3. 主人公・島崎三歩という唯一無二の存在
島崎三歩は、超人的な登攀技術を持ちながら、とても人間味あふれるキャラクターです。
遭難者に対して決して責めず、
たとえ遺体であっても「よく頑張った」と声をかける姿勢。
このスタンスが、読者の心に深く刺さります。
ヒーローではなく、「山を愛し、人を愛するクライマー」として描かれているのが『岳』の魅力です。
登山好きに『岳』を強くおすすめする理由
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山に対する意識が変わる
『岳』を読むと、山が「楽しい場所」だけではないことを、改めて実感させられます。
- 無謀な計画の怖さ
- 装備の重要性
- 天候判断の難しさ
- 引き返す勇気の大切さ
これらが物語の中で自然に描かれるため、登山経験者ほど「これは本当にそう」と共感するはずです。
登山のモチベーションにもなる
一方で、『岳』は決して山を否定する作品ではありません。
- 山の美しさ
- 山で出会う人とのつながり
- 山に挑む理由
これらも丁寧に描かれ、「それでも人は山に惹かれる」という感情が強く伝わってきます。
登山好きにとっては、
✔ 山へのリスペクトが深まる
✔ 自分の登山スタイルを見直すきっかけになる
そんな一冊です。
映画『岳 -ガク-』との違い
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2011年には、小栗旬さん主演で実写映画化もされています。
映画版は迫力ある映像と雪山のスケール感が魅力ですが、原作漫画はより深く、長期的な人間ドラマと山岳救助のリアルを描いています。
じっくり『岳』の世界観を味わいたいなら、やはり漫画版がおすすめです。
こんな人に『岳』はおすすめ
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- 登山・アルパインクライミングが好きな人
- 山岳事故や救助のリアルを知りたい人
- 山をテーマにした骨太な人間ドラマが好きな人
- 『孤高の人』『岳人』『神々の山嶺』などが好きな人
登山漫画という枠を超えて、人生・仕事・命を考えさせられる作品です。
まとめ|『岳』は登山漫画の金字塔
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『岳(ガク)』は、
✔ 登山の魅力
✔ 山の恐ろしさ
✔ 人間の強さと弱さ
✔ 命の重さ
をすべて描き切った、登山漫画の金字塔とも言える作品です。
登山をしている人はもちろん、これから登山を始めたい人にも、ぜひ一度読んでほしい名作。
「山とは何か」「なぜ人は山に登るのか」――その答えの一端が、この作品には詰まっています。






















